「え〜っ!やだ〜奈津実ちゃん!!」
森林公園の芝生広場・・・
慣れ親しんだこの場所で、いつものようにと二人で昼寝・・・
「久しぶり〜っ!すっごい偶然だね」
「本当、こんなところで奈津実ちゃんと会うなんて思わなかったよ」
俺を気づかっているのか、は抑え目の声で話していた
俺は身体を起こさずに、目を閉じたままにしていた
久しぶりの再会を邪魔するのも大人気ないだろう・・・
「あれ?なんだ、そこの人は相変わらず寝てるの?」
「あはは、うんうん、相変わらずだよ」
相変わらず・・・?
俺はと一緒に居るときに寝ていた覚えは無いぞ・・・
まあ、それでも本当に寝ていると思っているなら
望み通り、このまま寝ていてやるか・・・
「そっか、それじゃ・・・まずい?」
「う〜〜ん・・・でも、いいよ、起こしても」
ん・・・?
俺が寝ていると判定されると・・・
二人は何故かぐっと声のトーンを抑えて・・ひそひそと話を続けた
「本当?寝起きでいいの?」
「いいのいいの、いつもぼけっとしてるから、寝起きでもいいよ」
「確かに葉月って、いつもぼーっとしてるよね」
「ちょっと、奈津実ちゃんひどい!」
「何よ、自分でぼけっとしてるって言ったんじゃないのさ」
「私が言うのはいいけど、人に言われると悔しいの」
「なにそれ、もぉ、変なの〜!」
ひそひそ声の後に、くすくすと笑う声がしていた・・・
どうでもいいが・・・俺はぼけっとしているらしい
まあ、あえて反論はしないでおこう・・・
とりあえず、妙なかばい方もしてくれたから、許してやろう
俺は寝返りをして身体の向きを変え、ひそひそと話す二人を盗み見た
「でさ、葉月って寝起きで機嫌悪くならない?」
「うん、大丈夫だよ、怒ったりはしないから」
「じゃ、いい?」
薄く開かれたおぼろげな視界の中で、がこっちを見た・・・
そして、藤井に向き直ると、力強く頷いた
レジャーシートの上で寝転がる俺の元へ近づく二人・・・
芝を踏むかすかな音・・・そして
がさがさっ
シートの上に跪く気配のあと・・・俺の肩口にの手の温もり
「珪くん」
ゆさゆさと肩を揺らしながら
いつものように俺を呼ぶの声・・・
秋の心地よい風に乗って・・・の香りが鼻先を掠めて行く
「ん・・・・」
少しだけ身体を動かして・・・
俺は「さも今起きました」って顔をしてゆっくりと瞼を開けた
「・・・どうした?」
「珍しい人に会っちゃった、珪くん起きて?」
薄雲の広がる空を背景に・・・の髪がさらさらと揺れていた
その後ろに・・・
相変わらず、と言うより高校のころよりさらに磨きがかかった個性的な顔が見えた
「ん?誰だ?」
「誰だ?じゃないわよ、さっさと起きなさいよ〜」
腕組をして見下ろす姿はまさに「仁王立ち」
日本一この姿が似合うぞ、きっと・・・
俺は藤井の方を見ながら胡坐をかいて、わざとゆっくり伸びをした
「久々〜、葉月、アタシのこと覚えてる?」
忘れるわけ無いだろ・・・・
はば学で・・・をめぐる一番のライバルは藤井だったんだ
俺がを誘って断られるときは・・・かならず藤井と「デート」だった
「・・・確かの友達だ」
「そうよ〜、アンタの大事な彼女の親友、で、名前は?」
「ん・・・」
俺は藤井の名前を言う前に・・・・あるひとつの言葉を思い浮かべてしまった
ここで言うべきか・・・言わざるべきか・・・
少しばかり思案していると・・・待ちきれないように、藤井が口を開いた
「なにニヤニヤしてるのよ、まさかアタシの名前忘れたの?!」
「いや・・・覚えてる
おまえは・・・コイ科の淡水魚・・・
日本の湖沼、河川で最も一般的な魚で、コイに似るが口ひげがない
アジア大陸に広く分布し、金魚はその飼養品種・・・」
「はぁ〜?」
藤井は「わけがわからない」って顔をしていた
俺は、自分のひらめきが可笑しくてたまらなかった・・・
「珪くん、コイ科の淡水魚って・・・もしかして」
「何よ?わかったの?」
「うん、それって・・・フナ?」
「お、正解」
「やったー!」
俺は無邪気に喜ぶの頭を「よしよし、えらいぞ」と撫でてやる
は「うんうん」と満足そうに頷いていた
「ちょ〜〜〜〜〜い、待ちっ!アンタたち、何二人の世界展開してんの!」
「あ、ごめん奈津実ちゃん」
は少し照れくさそうに肩をすくめた
「ごめんじゃなくて、な〜〜んでフナが正解なのさ?」
「ん?」
「え?ええっと〜、金魚って淡水魚でコイ科なんだよ」
「そうじゃなくって!なんで、アタシがフナなのよ!」
意味がわからず憤慨する藤井に・・・俺は正解を教えてやった
「おまえは・・・「ふじい なつみ」だろ・・・
だから「ふ」と「な」で・・・」
「あ〜〜!解った〜!藤井の「ふ」と奈津実ちゃんの「な」で「フナ」なんだ!」
がいまさらのように大きく目を開き驚いていた
おまえ・・・わかって「フナ」で正解したんじゃないのか?
少し抜けているのは相変わらずだな・・・の場合
まあ・・・そういうところも可愛いんだよな・・・ん
「そっか、奈津実ちゃんがフナなら、えっとぉ、私はぁ・・・」
は少し考えるように口をつんと尖らせて首をかしげた
その仕草が可愛くて・・・俺は思わず抱きしめたくなったけれど、今はやめておこう・・・
「あのね!夢見ちゃってるみたいなアンタたちにいい事教えたげる」
「え、何、何?」
「このアタシが「フナ」なら、物置の壁をペンキで塗るときに上行ったり下行ったり忙しい人がいるわよっ!」
「え、物置の壁・・・、ペンキ・・・?」
藤井の眼光が鋭く俺を見つめていた・・・
この挑戦的な目はさすが俺のライバルなだけあるな・・・
「あ〜っ!解った解った!」
「ん、わかったのか?」
「うん、物置の壁を塗るのは珪くん!」
「え?何で俺・・・?」
「葉月の「は」と珪くんの「け」で「ハケ」でしょ!」
「、正解!!さっすがアタシの親友じゃん
で、「ハケ」に濁点つけるとどうなると思う?」
藤井がニヤリと笑うのを俺は見逃さなかった・・・
そしては・・・・・思い切り笑顔でこう言った
「えっと、ハケに濁点で、ハゲっ!」
「当たり〜〜っ!!あはははは!」
ハケに・・・ハゲ・・・
俺は・・・・完全なる敗北を味わった
くそっ・・・
こんなはずじゃなかったのに・・・
それからしばらくの間・・・
と藤井は・・・人目をはばかることなく大いに笑い転げた
俺は・・・ただひたすら、その嵐が過ぎ去るのを待っていた
「あ〜〜もぉ、おかしかったぁ」
「ホント、こんなに笑ったの久々だよね〜」
「そうだよね、久しぶりだよね、あっ!」
が急に何かを思い出したように俺を振り返った
「そうだ、忘れてた、珪くん!奈津実ちゃんがね、頼みがあるって」
「ん?」
「あのね・・・あのね、えっと、ん〜〜っと」
「あ〜、、もぉ、いいよ、アタシが話すから」
藤井は俺の前に大きなかばんを置くと、座り込んで中からカメラを取り出した
黒くてどっしりと重たそうなそのカメラは・・・モニターがついていなかった
「フイルムのカメラか?」
「正解、大阪行ったときにあちこち回ってようやく手に入れたんだよ」
そう言うと、藤井は大事そうにレンズをホールドした
「奈津実ちゃん、姫条くんに連れて行ってもらったんだよね、大阪」
「違うって〜、アタシが連れてってやったの」
「え、そうなの?姫条くん大阪の人じゃなかったっけ?」
「もぉ、は気にしなくていいから、ちょっと黙ってなさい」
「あ・・・」
拗ねたように「うぅぅ」と唸るをよそに
藤井はカバーを外すと、レンズを俺に向けた
俺は・・・咄嗟にレンズの前で身構え、その中心を見つめていた
「うわっ、マジモデル顔!」
「おい、からかうなよ・・・」
「あ、ごめん!」
藤井は、すぐにファインダーから顔を外すと、カメラを胸の前に戻した
そしてコクリとひとつ頷くと、こう言った
「葉月、撮らせてくれない?」
「え・・・?俺を?」
「そう、正確には、アンタと、二人を撮りたい」
藤井は、のほうにカメラを向けてシャッターに指をかけた
ピントを合わせるアラーム音が鳴り・・・
カシャカシャと小気味良い機械音が続いた
「ね、葉月、アタシのモデルになってくれない?」
振り返った藤井と一緒に・・・が俺の様子を伺っていた
二人の瞳が・・・キラキラと輝いて俺を見つめていた・・・・
「続く・・・・」
dream−menu top
お客様へ
いつもありがとうございます!
出来るだけ早くこの作品は仕上げたいと思っています。
目標は11月の終わりくらいのつもりです、ここで宣言して首を絞めておきましょう!
他にたくさん途中のものもありますが、どうぞ長い目で見守ってくださいませ。
よろしくお願いいたします。
2006/10/16 管理人time